二年前の入院を機に我が人生を振り返り、今後の道標を確立すべく模索しながら書き綴ってきたが、今回を持って最終章としたい。どうやら私のまだ見ぬ[新大陸]を探す大航海は、まだまだ今後も続きそうだ。人生は一度きり…というシンプルな事実を受け入れ、自分の持てる命を[使い切る]為の試行錯誤を、良い意味で必要とされる[使命]に従って後悔無く全うしたい。
たとえ二律背反する分岐点と直面しても、我を捨て他者の利益を考え行動できるように心掛けたい。自分に与えられた命は自分のものであるようで、自分のものでは無いことだけは間違いない。特に入院を機に[生かされている]意味を考えることは、人生そのものだとも思えた。
スペインの芸術家のパブロ・ピカソが『The meaning of life is to find your gift. The purpose of life is to give it away.』つまり『生きる意味とは、自分に与えられた才能を見つけること。生きる目的とはその才能を他人に分け与えること』と端的に言い、またアルバート・アインシュタインは『Only a life lived for others is a life worthwhile.』つまり『誰かの為に生きてこそ人生には価値がある』と遺した。
先哲たちの重みある至言は、換言すれば誕生した奇跡を実感しながら自己の存在価値を活かし、他者の幸福に繋がる生き方こそが自己実現そのものだ、と確信できる。社会に生きる我々は、一人で生きることは出来ない。
様々な出逢いや運命の織り成す奇跡の絨毯は、一度きりの超大作に仕上げたいものだ。そして、最後の一針まで懸命に入魂しながら織り成したい。運命を活かし、天命に気付き、使命に心燃ゆる人生を理想とするならば、他者に生き朽ち果てるまで全うできればこんな幸せはなかろう。
マイノリティーとしてこの地で誕生し様々な挫折と出逢いを重ね、生かされながら辿り着いた[教育]というテーマへの試行錯誤はまだまだ今後も続きそうだ。時代の変化に対応すれども、時代を超えた[不変の真理]の追究を忘れてはならない。天が私に[教育]を通じて一隅を照らす使命を与えたならば、喜んで燃え尽きるまで全うできる覚悟が、この手記を契機に再認識できたことに感謝しながら最終章としたい。
半ば自省を込めて振り返りながら、自己の存在意義を模索しながら書き綴ってきたが、今後は様々なテーマで呟いてみようと思う。偏狭した持論も有ろうが、そこは寛大な心でお許し願いたい。30年も教育に携わっていたら、心に残る感動や出逢いも枚挙にいとまがないぐらいだが、数百人もの進学、進路に関わってきた教え子の中には、忘れられないエピソードも数多く存在し私の心の拠り所となっている。
真っ先に挙げなければならないのが、私の⻑男だろう。そもそも彼の誕生が、奇しくも阪神淡路大震災を契機に行き詰った本業を助けるべく始めた[教育事業]のキッカケになったことは、先述したとおりだ。自分の父親との関りや自分の進路の挫折を、⻑男の誕生を契機に良い意味で再検証しながら、自分が達成できなかった高みへ導きたいという思いがあったことが教育事業の原点だ。
私の父は、教育への憧れを持ちながらも時代の宿命に翻弄されながら、働き詰に働きながら夢を私に託すしか無かった。当の私は二浪まで国公立医学部受験をするが夢果たせず、他学部卒業後に流浪するかの如く気ままに人生を放浪してきたのは、これまで書き綴ってきた通りだ。それはそれで我が半生は全く後悔無く今日があると感謝できるのだが、こと⻑男誕生の時は自分の父と私の挫折と、やがて来る[未来]の息子の姿を重ねて、どうしても繰り返したくない思いがあったことは事実だ。つまり、自分の失敗を当時の環境や父の存在のせいにしながら逃れてきたことも有り、我が息子の誕生を機に、私の導き次第で息子の可能性が左右される半ば脅迫概念に支配されていたことが動機になっていた。そして当時、過去の自分の失敗の原因が良く観えたので、次のトライアルが有れば絶対に成功するという根拠のない自信だけが有り、試してみたいというのが教育事業立ち上げの動機になっていた。自分が理想とする[教育]のために⻑男を実験台に乗せ、⻑期に実践してみたいと強く思い、実行したのだ。実際に、⻑男は私の失敗を活かす実験材料としては、申し分のない素質と能力を備えていた。
彼はアペックスの二歳コースから高校3年の卒塾まで15年もの間、数々の記録と実績と逸話を残して、現役で【京都大学医学部医学科】に合格した。そして現在は京都大学の医局に属しながら、医師としてまた一児の父として、仕事と育児の両面で多忙な日々を送っている。そんな⻑男との関りは、私の場合家庭と教室との多元的な関りが出来たので、世の男性とりわけ息子と会話も儘ならない多忙な父親には参考にならないかも知れない。
その意味で、私は教室を立ち上げたおかげで⻑女も⻑男も⻑い時間の関りの中で彼らの成⻑と共に喜怒哀楽を共有できたことも有り、子育てに関しては全く後悔が無く本当に楽しかった。そして自分のできなかったことを、⻑女も⻑男も具現化し実現してくれたお陰で、私の子育て論は偏っているかも知れない。
今、彼ら各々が親として懸命に子育てしている様子に目を細めて観られることに感謝し、何よりも一番の楽しみとして3人の孫たちと関われる至福のひと時が有るのも、脈々と繋がった祖先から伝承された血とアイデンティティーの賜物であると思っている。だから祖父として、孫たちに教育する役割も私なりに拘りたいと思っている。核家族化した現代の損失は祖父⺟との関りを無くしたことが大半で、その穴を埋めるべき役割は私の責務と自覚するからだ。
孫にとっても、祖父⺟のフィルターを通じて肉親を観る方が、新鮮な驚きや素直な感情が育まれることが期待されると思われる。
それほど、幼児期に育まれる原体験や刷り込みは影響が大きい。正に、三つ子の魂百まで、という原理をよく理解し、教育に良き活用をしない手はない。その意味では胎教もしかり、⺟なる存在はとてつもなく大きく、三歳までは⺟親の愛情と⺟との関りが全てと言っても過言でないだろう。大脳は、猛スピードで大半の形成を三歳までにするそうだが、この時期までに積んだ原体験がその後の人格や能力を開花させるための土台を培っていることは、容易に想像できる。
まずは⺟親から溢れんばかりの愛情を注がれて育つことが絶対条件だ。自分の存在を無条件に受け入れられ愛されて育む心は、何よりも可能性を開花させる土壌になり自己を絶対的に肯定できる為の必要条件となろう。そして他者を信頼し愛する土壌になり、その後の社会的関りでの重要な要素になるので、絶対的な信頼で無条件に愛された子供はそれだけで無限の可能性を秘めていると言っても良いかも知れない。
我が家の子育て論が万人に向くかどうかは懐疑的だが、⻑男誕生を契機に教育事業を立ち上げ、実践してきた経緯を綴りながら、参考になる場合も有るかも知れないので、気ままに呟いてみたい。
[次回に続く]
※今回で私の半生を振り返った[人生一度きり]の[呟き]は[最終章]とします。何故、教育事業を立ち上げ、今日にいたったのか…を振り返りながら、新たな責務と教育に向き合う難しさを痛感する次第ですが、三省四顧ならぬ、自身を客観視することで新たなテーマが芽生えてきた気もします。今後も子供たちと人生の節目や成長過程の旬な出逢いの中で、私の出来る[一隅を照らす]瞬間に、全力を尽くしたいと思います。
早いもので師走に入った。坊主も走る忙しさにかまけて、年内中に今年1年を振り返り反省すべきはして来年に備えたい。兵庫では辞職に追いやられた知事が返り咲き、アメリカでは劣勢を報道されていたトランプ氏が圧勝して大統領の返り咲きを果たした。マスコミを鵜呑みにすれば、現実が見えない時代になったのかも知れない。自分の目で見て、アタマを使う努力を啓示している象徴的な出来事かも知れない。
今月の予定
○11/30日全国テスト[全学年対象]
○12/9〜21日成績懇談会
○12/24日…冬期講習開始
○12/26日(年内最終授業)
○12/27〜1/5日休講
○1/6…新年授業開始
●1/6,7…冬季強化合宿
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