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アペックス便り11月号

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コロナ禍で幕を明けた今年も、早いもので後二か月で幕を閉じようとしています。街ゆく人のマスク姿もお馴染みになって、コロナ後の光景はすっかり変わりました。政府が矢継ぎ早に打ち出したGO TO〜の各キャンペーンは、いたるところで三密を促し、逆にウィルスの拡散を促進しているのではと危惧する声もあり、経済回復優先なのか、感染抑制優先なのか、政治さえも手探りの混沌です。人類が対峙するこの未知のウィルスは、正解が見えない故の模索を我々に今後も強いるでしょう。臨機応変を求められ、対応余儀なくされる我々個々の意識変化が一層重要になります。暗闇を歩くかの如く足元を照らすライトの様に、意識変化が小さな歩みを継続させ、やがて暗闇を抜ける道に繋がると信じたい。コロナと共に未来を切り開く日々の準備だけは怠りなく継続させましょう。

『自分の壁』(養老孟司)〜自分探しなんてやめなさい〜

秋の夜長は読書に最適だ。ましてやコロナ禍のソーシャルディスタンスの折だから、読書に埋没する日を設けては如何だろう。新しい自分が発見できるかも知れない。「自分」と言えば、蔵書の中から『自分の壁』(養老孟司 著) のタイトルが目に留まり、久々に再読してみた。個人的にも大好きな養老氏の著作は随分愛読したが、『バカの壁』で一躍著名になった医学者で、専門の解剖学から人間を冷静に分析する視点はいつも新鮮だ。誰もが持つ頭の中にある「壁」を超えたときに初めて、新たな試行の次元が見えてくる、と説き、目からウロコの指摘が随所に詰まった一冊だ。主な章タイトルを抜粋すると、◎ 「自分」は矢印に過ぎない…と始まり、◎本当の自分は最後に残る◎私の体は私だけのものではない◎絆には良し悪しがある◎政治は現実を動かさない ◎「自分」以外の存在を意識する◎溢れる情報に左右されないために ◎自信は「自分」で育てるもの…と締めくくっている。養老氏の根幹には、昆虫博士の異名をとるぐらいの自然への造詣と医学者らしからぬ?卓越した歴史観も有るゆえの視点が鮮明だ。例えば、明治以前のしかも鎖国上にあった日本の文化や歴史が、特に明治以降の近代化を急ぐあまりの歪みにも考察し、西洋的近代的自我の「自己」を無理やり導入する弊害も無視してはいない。我を立てるほうに進んだ西洋文化と、我を消すように進んだ東洋文化の仏教思想の根底にある日本の立ち位置が、特に戦後のグローバル化の「違和感」への根拠は、納得ができる。また、個を主張する西洋と違い、我を消す仏教を残す国々には、自然が多く残っているという着眼も忘れない。田畑も身近だった戦前の日本人が、理屈で成り立つ西洋とは現実の捉え方そのものを、イデオロギーから外す、いわば「意識」外の意識を無視できないと説くのは、大いに納得できる。あくまで言葉に過ぎないイデオロギーよりも、そこらに生えている草木の方が余程確かな現実で、自然に触れる重要性に意味があると説く。「自分の意識では処理しきれないものが、この世には山ほどある」ことの意識の体感が大切だ。「自分探し」なんて無駄なこと。「本当の自分」を探すよりも「本物の自信」を育てるほうがいい、と断言する養老氏の定義する「自信」とは何か。目前の壁に当たっての逃げ得など無く、回避してまた繰り返し立往生するくらいなら、他人とかかわり時には面倒を背負い込むほうが寧ろ楽だ。何かにぶつかり、迷い、挑戦し、失敗し、ということを繰り返し、自分で育ててきた感覚を「自信」という…で締めくくっている。夏目漱石が晩年に至った境地の「則天去私」は、結局「私なんていない」の考え方。授かりものの人生を無駄に自分に囚われて浪費するより、生かされた命を自信に育てたいものです。

おしらせと今月の予定

※進学進路相談実施中※
受験まで100日カウントダウンも切り、いよいよ学校での進路指導が開始します。自分の為の後悔しない進路、進学を決定するにあたり随時相談を受け付けています。予約を取って事前準備をしましょう。特に今年はコロナ受験となり、学校での進路指導が相当慎重に厳しく予想されます。情報と方針を強化しましょう。

○10月29日〜31日(休講)年間調整日の為
○15日五ツ木模試…受験生のみ
○28日(全国テスト実施)対象…非受験学年小学/中学
※当日参加が不可能な場合は必ず事前報告して下さい。

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