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アペックス便り9月号

◆前回のつづき  〜大学時代を経て社会へ〜PartA

●自由と自己責任…経済的自由と社会的自由を求めて…

私の愛車は、私の日本全国の旅に大いに貢献してくれた。

今でいうキャンピングカーのように内装も自分で改装し、いつでもどこでも車中泊可能な仕様にして、サーフボードを積んで日本中を駆け巡った思い出のギッシリ詰まった相棒だった。毎週のルーティンで伊勢や日本海にサーフィンに出没していたが、夏休みなどの長期休みには、東は東海地方、関東地方。北は東北から北海道まで。西は四国、さらに九州と、足を延ばし、あちこちに気ままに友人と長期間の旅を楽しんだ。もちろん車中泊のどケチ貧乏旅だったが、時々現地の見知らぬ親切な人と出会っては、食事や風呂や寝どこまでお世話になって、各地方の方言や人情に触れながら忘れられない思い出を数えきれないぐらい頂いた。

気ままに旅をするのは最高だ。困ったときには知恵がでるし、トラブルが有っても、自分で解決しないと前に進まないし、おカネも無いなりの前提の旅だから、無くなるまで旅を続け見知らぬところに行っては、[観てみたい]や[やってみたい]を最優先にしていた。お陰で、学生時代に離島を除いて[クルマの旅ゆえ]日本全国は殆ど制覇し、ナビの無い時代に頭でナビする感覚と技量は、少し自慢できる得意技になった。行きたい場所を地図を拡げて事前にチェックするだけで大概は地図も見ずに目的地に辿り着くことができた。

その得意技は海外でも発揮され、海外でもレンタカーを借りて周遊するのが好きな私は、北米大陸もヨーロッパも何度も行く毎にナビ無し周遊を満喫してきた経験がある。今はスマホ一つ有れば、なんと音声まで付けて瞬時に導いてくれる時代になって便利極まりないが、地図で事前チェックに集中して、苦労しながら土地勘を刷り込む労力が省けた分、ハプニングや迷い道から思わぬ収穫も得られず、まっしぐらに目的地に行ける安心感の代わりに、無事に到着できた喜びや緊張感の無い道中は何とも味気ないと言えば郷愁的過ぎるのだろうか。

旅の醍醐味は未知との遭遇に尽きる。行動半径を拡げるにつれ、ちっぽけな自分の存在を改めて大きな鏡に映しながら世間の広さを実感できる。日本は狭い小さな国だ、なんて認識はまだまだ甘い。

島国特有の地理関係もさることながら、気候風土の違いが北は北海道から南は九州まで実に多種多様な文化と生活を育んでいて、興味が尽きない。

更に2000年の歴史が織り成す地域特有の彩が添えられ、人情味や人の気質にも微妙に影響を与えているから面白い。

今はラジオ、テレビの浸透のお陰か、方言も共通語に隠れて、特に若い世代は殆どが共通語を駆使して違和感なくコミュニケーションができるが、旅をしながらキツイ方言に面食らって、全く意思の疎通が出来なくて困った笑い話が幾度となく経験できた。

北海道から青函連絡船に乗って青森の地に踏んで最初にびっくりしたのが、単語どころかアクセント、発音から正にもはや異国ではないかと思ったぐらいだ。北海道は明治以降の開拓使の経緯から関東出身の屯田兵のお陰か、割と標準語に近いレベルで困らなかったのが、東北に入った途端に道を尋ねても何人介しても聞き取り理解できず、挙句に分からずじまいのまま迷い続けたこともあり、津軽海峡の壁を大いに感じた次第だ。

九州の宮崎、鹿児島あたりでも方言には相当面食らった。熊本では、たまたま入って美味しく戴いた食堂の親父さんが我々に興味関心を持って、「クルマで寝ずに、風呂も入って一晩泊まっていけば」という誘いに甘え、お世話になったことが有るのだが、その晩は親父さんとのキツイ方言と格闘しながら楽しく過ごした。度の強いイモ焼酎を一本空けながら、馬刺しや土地の旬な肴を交えながら、明け方まで付き合わされた。驚いたのが、長い江戸幕府の外様に対する圧政からくるのか、東京に対するアンチ感情は大阪のそれとは又異質な形で垣間見られ、刺激的な発言は新鮮だった。

しかも田舎の立派な日本建築の居間に、先祖の遺影が並べられ、真ん中に[西郷隆盛]がドンと鎮座しているのを眺め、始終呑みみながら出てくる会話の節々に[西郷隆盛]に対する尊敬と畏敬の念は揺ぎ無く織り込んで語ってくるので、逆に感心してしまった。親父さんだけではなく、肥後もっこすは皆そうだと言い切るから、やはり歴史観は大きい。九州男児のプライドと人情に触れた楽しい思い出だ。

狭い島国ニッポンどころか、こんなに未知だらけの広い国ニッポンを複雑に入り組んだ土地の人情の違いや機微に触れながら『日本でこの多様性だから世界中を旅すれば、どんなワールドが待ち受けているのだろう…』と、旅を通じて世界への憧れも同時に育まれていった。テレビを殆ど観ない私が、当時のお気に入りに[兼高薫…世界の旅]と[なるほどザ.ワールド]が有って、『いつか俺も…』という憧れを大いに掻き立てられたものだ。

世界は広い〜世界中を飛び回りもっと知りたい…という憧れは、カタチを変えて微妙にその形態を変遷させ、我が人生の方向性に影響を与えていくのだが、潜在意識に刷り込まれていく[我が有るべき理想像]は、マイノリティーとして世界に通用する[個のチカラ]に集約されていく。

素晴らしい日本で育まれた個性のみならず、半島にルーツを持つ在日としての我が血の納まりどころを模索する旅を、広い世界に新たな活路を求め、大航海したいという欲望を持ち続け、世界で俺は通用するのか…と試したい機を伺いながら大学のモラトリアム時代に大いに葛藤した。

『世界相手に貿易する商社を起業して、日本を飛び出せ…』なんて夢想状態で大学進学の急転換を図り、モラトリアム時代を楽しく過ごしているのも束の間、アッという間に周囲は卒業後の進路なんぞ考える時期になっていた。

だが相変わらず私は、商社を起業するなす術も無いまま、流浪していた。大半の就職希望生は、先ずは先輩たちの企業にアポ取りし、就職対象企業の情報収集をしながら、企業訪問を始めていた。我が母校の就職戦線はそれなりに楽な様で、私の仲間や友人も、次々と名だたる一流上場大企業から2〜3社の内定を貰い、卒業後のビジョンを交わしながら、早くも社会人での目標なんぞ意気揚々と語りだす始末だった。

そんな周囲の様子を横目に、私は[就職]なんてアホ臭いとばかり(我関せず)のポーズを取り続けていた…というか、取らざるを得なかった。

要は、就職内定を得んが為の時期に、一切就職活動をせず卒業後の進路を全く白紙にしていた…つまり、空白状態にする以外無かったのだ。

周囲はビックリしながら、その真相を知りたがり不思議に思っていたようだが、私には相応の深い事情が複雑に絡み合い、がんじがらめになり身動きが取れない状況に陥っていた。

[次回に続く]

※将来の夢を未だ見ぬ未知の世界に馳せながら、経済的自由の礎を確立せんが為に大学生時代を謳歌しながらあらゆる経験値を高めていくが、あっという間のモラトリアム期間も終焉を迎え、就職もせずに流浪しながら社会に放り出された恰好のまま卒業に至る…さて、この先の我が大航海の旅は如何に続いていくのか…

おしらせと今月の予定

世界的な記録的猛暑が続く中、国連総長がいみじくも言った。地球温暖化が終焉し地球沸騰化の時代に入ったと…。ハワイ島では森林火災がハリケーンに煽られ街が一夜にして壊滅した。北米カナダでは断続的な森林火災が猛威を振るい、南欧スペインでも記録的な干ばつが続いている。9月1日の防災の日は関東大震災100年の節目を迎え地震大国の日本の防災意識が問われる。秋の台風シーズンを前に、これまでの常識が通用しない未曾有の時代に対する意識の変換が個々に問われているのは確かだ…。

今月の予定
○2日…全国テスト(対象:受験生)
○18日(敬老の日)…通常授業
○23日(秋分の日)…通常授業
※祝日の授業にご注意下さい。塾カレンダーに従ってご確認下さい。

※8月11日〜13日の3日間、恒例の夏季特別強化合宿が実施されました!
受験生を中心に高校生や小学生の非受験生も参画し、指導講師と寝食を共にする密度の濃い熱い時間を過ごしました!合宿で得た自信を後半戦に繋げるぞ!

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