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アペックス便り1月号

●子どもに幼児教育は必要か?

長男の誕生と阪神淡路大震災を契機に[教育事業]を立ち上げたのは、先月号まで連載した『人生は一度きり』で述べてきた通りだが、とりわけソニー創業者の一人の井深大の著書『幼稚園では遅すぎる』の影響は大きかった。

結論から言えば、私は幼児教育の必要性は『絶対に必要』の立場だ。だからこそ幼児教室[アペックス能力開発スクール]を創設し多くの幼児のその成長過程をつぶさに観察し、長いスパンで子供たちと関わることができた。また、その後の彼らの成長も観ることができたし、初めて気付いた結果を知った立場で断言するのだ。勿論我が子二人もその実践の場で過ごしてきたのだから、教室だけの環境のみならず、家庭環境での子供との関わり方も総合的に実践し、成人した我が子の成長過程もつぶさに観ることが出来たので確信できたのかもしれない。

井深大が25年にわたる知見をまとめた幼児教育の『幼稚園では遅すぎる』が一番強調するのは、三歳までの子育ての重要性である。

また、その環境づくりや親が子供を褒めることの重要性を特筆した幼児教育のエッセンスが随所に記され、子育てに希望と勇気と喜びを与えてくれる。井深氏は幼児期の脳の発達や環境の影響を科学的視点から解説し、親が子供の[可能性]を引き出すために『褒めること』や『遊びを通じた学び』を推奨している。

また、具体的な家庭での教育方法や実践例も紹介されており、親子の関わり方についても深く考えさせられる内容となっている。私自身が漠然と描いていた『理想の子育て』が随所に見られ、私の場合勇気を貰っただけでなく、信念に育つ教育実践へと邁進できた子育ての指針となった。

その主な指針を要約すれば【遊びを通じた学び】【親子の対話】【五感を活用した体験】【褒めて育てる】に集約できると思う。

【遊びを通じた学び】は、アペックスの幼児部のスローガンにもなっている『子供はみんな学びたいを遊びたい』に換言できると思う。人間が元来持つ欲求の『知りたい・わかった』は学びの基本であり子供が楽しみながら自然に学べる環境を整えることが大事である。環境にコストを掛ける必要は全く無く、我が家ではいつでも手の届くところに絵本や積み木やスケッチブックとクレヨンを置き、読み聞かせや積み木遊びやお絵描きなど、したいと言えば直ぐにできるように、そして飽きるまでさせていた。特に長男は姉の遊ぶ姿を常に見ながら参加していたので、コトバを話す前にイロハ積み木やカルタで文字を先に覚えてしまった様だった。[言葉]を発する前に[文字を認識]できたのは、その後の読書能力や言葉の語彙力の増加にすごく役立ったと思う。人間は文字を通じて認識を深めるが、長男は三歳になる前に言葉を文字と併用して、認知と認識を交えて習得することができた。文字の習得が早かったので、絵本や児童書を通じて読書好きになったのは、その後の語彙力アップに大きく寄与したと思う。私自身が本好きなこともあって、中古本屋に行く都度、子供達には読みたい本は欲しいだけ与えていた。新本の価格の1割や2割で買えるのだから量的な欲求も満たすことが出来き、我が家の中古本屋通いは日常のルーティンになっていた。昔と違って、商品管理が行き届いた今日の中古本は、新本と変わらぬ程度の良い本が数多く有り、又ジャンルも多様で本当に重宝した。

【親子の対話】は、日常生活で子供の問いに答え好奇心を育むのだが、幸いに我が家は自営業もあってか、家族が一同にする機会が多く、しかも皆が話好きなので、いつも賑やかな団らんの途切れない環境にあった。

特に言葉の認識が早かった長男は、ことある毎に『なんで?』を連発する時期も早く、三歳になる前に日常生活の疑問や目にした不思議を次々と問うてはその答えに納得していた。私がその際に一番気を付けたのは、理由を付けて返答する事と、絶対に幼児語を使わず返答する事に徹した点だ。どうせ未だ理解していないだろう…では無く、分かろうが分からなくとも、きちんと理路整然と返答するようにしていた。

例えば、一緒に車でショッピングセンターの駐車場に入る際に、『人がいないのに、どうしてゲートが開いたの?』と息子が尋ねることが有ったが『これはセンサーが有って、車の侵入を検知したから自動的にスイッチが入って開いたんだよ』って答えたら、次は『センサーって何?車が見えるの?』と訊くものだから、『レーダーか赤外線で車に当たって反射してスイッチを入れた仕掛けのようなもの』って答えると、『レーダーって?』『赤外線って?』と際限なく質問が次々と出てくるのだが、面白おかしく例を交え応えられる限り対応するようにしていた。息子は『へぇー』『そうなんや』と分かった様な返事を返すが、理解の真偽のほどは定かではない。しかし、いろんなジャンルで子供たちは物凄い[何で?マン]の時期があるが、その時期の対話を楽しんで過ごすことは凄く大切で、やり取りのなかで思わぬ副産物も得られることがある。それは、子供たちが何に興味や関心があるのか、質問から垣間見られることだ。長女は情緒的な質問が多く、質問も感覚的な要素に起因することが大半で、長男は自然現象や科学的な要素が多く、理屈や原理の説明を聞いて腑に落ちた時は、凄く欲求を満たされたようだった。

中でも4歳ごろに質問された内容は今でも鮮明に覚えている。『何で昼と夜があるの?』と質問されて、理科の授業よろしく地球儀と懐中電灯を引っ張り出してきて、実演しながら分かるまで説明したら、目をまん丸にして物凄く驚きながら納得してくれたことがあった。

長男の驚きは、地球と言うとてつもなくデカい天体に自分が存在して、しかもその天体の日周運動が毎日あるという事実に驚いていたのだ。

そんな好対照な二人だったが、仲良くお互いが『ああでもない、こうでもない』と対話で質問を共有することも有り、よく面白おかしくウケを狙う為か、それぞれが勝手な結末に導いては、皆が大爆笑してオチに満足して盛り上がることも頻繁にあった。親子のみならず、家族皆で対話の中から更に好奇心を育む雰囲気が自然と作れたのは本当に良かったと思う。

我が家の場合、会話の無い家族どころか会話の多すぎる家族で年がら年中会話と笑いが絶えなかった。また子供は正直で、夫婦の表情等よく観察していて、夫婦の会話から関心ある内容をよく質問することも多かったので、我々も子供が傍にいるときの夫婦の会話では、特に話題や言葉使いには気を使った。

週に一度の休みの日曜日は家族の憩いのひと時で、私の外出好きも手伝って必ず近県や郊外に家族総出で遊びに行くのだが、そんな楽しみな予定を話題にするときは、季節や場所柄から連動する話題が、好奇心を刺激するのに自然と一役買っていたようだった。私自身が無類のアウトドア派の遊び好きなことを良いことに、家族を巻き込んで様々な体験を重ねたことが、幼児期の教育の中で一番の環境つくりになっていたのかも知れない。

アウトドアは知的好奇心を刺激する宝庫だし、自然の仕組みや社会の縮図に幼児期からどっぷり浸かることで、感性を研ぎ澄ます絶好の環境が常態化していたのかも知れない。

アクティブラーニングの一般的な手法として,
[発見学習]…子ども自ら疑問を持ち、答えを発見するプロセスを重視する。
[対話型学習]…子ども同士や保育者との対話を通じて考えを深める。
[体験型活動]…実際の体験を通じて学びを促進する…
等あるが、これらを自然に楽しんで実践できたことが、大袈裟に[教育理念]に謳うまでも無く我が家のルーティンであったのが何よりも幼児教育の環境づくりに寄与していたのは確かだ。

【五感を活用した体験】は、音楽や絵画、自然観察などを通じて感性を刺激することで、特に幼児期の体験はその影響が大きい。

我が家の場合、姉たちがピアノを専攻した音大出身ということもあり、私自身も幼い頃からクラッシックピアノが常に鳴り響く環境にあった為、自然と長女も長男も3歳からピアノを習わせてみた。

専門的に音楽を専攻した姉がいたのも環境的には良かった。基本から姉に託すことが出来たので、特に長女はそのまま本格的に音楽を志すようになった。三歳から始めた為か、絶対音感が身に付き、日常の生活音も全て音符を伴って聴こえるらしいので、音への感性を磨くのは早期教育の方が有利の様だ。

⻑女は小学生高学年からコンクール等にも出るようになって、自ら目標設定しながらハードな練習を課し、日常がピアノ中心の生活になり、最終的には音楽大学を志し、卒業した。音楽を演奏するのに特に旋律の中からどのように表現するのかは、幼児期から自然一杯のアウトドアでの体験が大きかったようで、本人曰く、自然の織り成す四季色々な変化や自然界の音は直接的にも間接的にも良い刺激を貰えて良かったみたいだ。

[次回に続く]

おしらせと今月の予定

新年明けましておめでとうございます。新しい年を迎えこの1年を実りある輝かしい年にする為に、心に期する想いを一つ一つカタチにしていきましょう。一歩前に踏み出して実践しながら実現させましょう。心の底から強く想い、行動する事で必ず変化が起こります。そして、成長が実感できれば必ず継続できる筈です。今年はチェンジとチャレンジで突っ走る!…で、いかがでしょうか?

今月の予定
○1/6,7…冬季強化合宿
○7日…通常授業開始
○18日…中学入試実施解禁
○18日…大学共通テスト
○25日…全国公開テスト(小中学生実施)

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